「先生、今日も行けなくてごめんなさい」(教員体験談)

北海道:北の伴走者
不登校の期間:公立中学校教諭として7年、現在はフリースクールスタッフ(5年目)
対応してきた児童生徒について:
私が担任として受け持った生徒たちの多くは、「感覚過敏(音や光への過剰反応)」や「対人不安」を抱えつつも、診断名がつくほどではない、いわゆるグレーゾーンの子どもたちでした。学校という「騒がしく、情報の多すぎる場所」に身を置くだけでエネルギーを使い果たし、バッテリー切れを起こして動けなくなってしまうケースがほとんどです。
「先生、今日も行けなくてごめんなさい」。
電話越しに震える声で謝る保護者や、申し訳なさそうにうつむく生徒たち。
教員時代、私はこの言葉を聞くたびに、胸が締め付けられるような思いをしてきました。
なぜ、教育を受ける権利を行使できない子どもたちが、加害者であるかのように謝らなければならないのか。
その矛盾が、私が教壇を去り、民間の支援現場へと足を踏み入れた原動力となりました。
教員の立場から見ていた景色と、フリースクールのスタッフとして見る景色は全く異なります。
学校内部にいた頃の私は、どんなに生徒に寄り添いたいと願っても、「学習指導要領」と「管理教育」という巨大な壁に阻まれていました。
一斉授業、全員参加の行事、連帯責任。これらに適応できない子は、制度上「支援が必要な子」ではなく「困った子」として処理されがちです。
行政が学校現場に求めるのは、依然として「不登校率の低下」という数字の結果であり、一人ひとりのウェルビーイング(幸福)ではありません。
行政に対してまず訴えたいのは、学校内における「評価軸の多様化」です。
現在の公立校は、あまりに「座学」と「集団行動」に偏りすぎています。
例えば、感覚過敏で教室に入れない生徒が、図書室で一人で専門書を読み耽り、大人顔負けの知識を身につけていたとしても、それは現在の評価システムでは「欠席扱い」であり「評価不能」となります。
学びの形は本来もっと自由であるはずです。
家庭でのオンライン学習や、地域のフィールドワーク、フリースクールでの活動などを、文部科学省の通知レベルではなく、現場の通知表や内申点に直結させる具体的なガイドラインを、地方自治体レベルで早急に策定していただきたい。
次に、民間フリースクールの現状についても、現場の生の声として伝えなければなりません。
現在、フリースクールは「学校に行けない子の受け皿」として期待されていますが、その実態はあまりに不安定です。
私たちが運営するスクールも、常に資金難との戦いです。
行政からの補助金は限定的で、運営費の大部分を保護者からの月謝に頼らざるを得ません。
その結果、本来支援が必要なはずの「経済的に困窮している家庭」の子どもたちが、フリースクールという選択肢から排除されてしまっています。
これは教育の機会均等という憲法の理念に反する事態です。
さらに、民間施設における「質の担保」も大きな課題です。
フリースクールには公的な設置基準がないため、中には適切な専門知識を持たないスタッフが精神論で子どもを追い詰めたり、逆にただ放置するだけになったりしている施設も残念ながら存在します。
行政には、経済的支援とセットで、スタッフの研修制度の構築や、第三者機関による評価システムの導入を検討してほしいのです。
丸投げするのではなく、共に子どもを育てる「パートナー」としての関係性を築きたいと考えています。
また、学校現場の先生たちを救うことも、結果として不登校児童の環境改善に繋がります。
今の先生たちはあまりに多忙です。
一人ひとりの「行けない理由」を深掘りする時間も精神的余裕もありません。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を現在の「週に数日」から「常駐」へと変え、担任が一人で抱え込まない体制を、予算措置をもって実現してください。
世間の皆様へ伝えたいのは、不登校は「特別なこと」ではないということです。
北海道のような広大な地域では、学校という物理的な場所への移動自体が困難な子もいます。
雪の日に体調を崩す子もいます。
そんなとき、「無理をしてでも行くのが美徳」という価値観は、子どもを壊す刃にしかなりません。
不登校を経験している子どもたちは、実は非常に感受性が豊かで、今の社会の歪みに敏感に反応しているだけなのです。
彼らを「救う対象」と見るのではなく、新しい時代の学び方、生き方を体現している「先駆者」として尊重できる社会になってほしい。
そのためには、行政が「学校一択」の教育神話を終わらせ、多様な学びのインフラを公費で整備することが不可欠です。
「学校に行っても行かなくても、君の価値は変わらないし、学びはどこでも続けられる」。
全ての大人たちが、心から子どもたちにそう告げられる社会を目指して、私はこれからも現場から声を上げ続けたいと思います。

この体験談は、ご本人に書いていただいたものです。(改行のみ調整)
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